モデロとラテンアメリカ系米国人の購買力

2023年 7月11日

22年間“キング・オブ・ビール”として米国トップに君臨していた、米国を代表するビール、バド・ライトから昨月王座を奪い取ったコンスタレーション・ブランズ社のモデロ・エスペシアルは、5月に引き続き6月も米国売上高で最上位に輝いた。

蒸留酒・ワインを中心とするアルコール飲料メーカー、コンスタレーション・ブランズ社が、モデロ・エスペシアルを米国で成功に導いた一つの要因として、同社が近年勢いを増すラテン・アメリカ系米国人の購買力に注目した点が挙げられる。

そもそもモデロ・エスペシアルは、メキシコ最大のビール・メーカー、グルポ・モデロ社が所有するブランドであったが、2013年、バド・ライトの親会社、アンハイザー・ブッシュ・インベヴ社によるグルポ・モデロ社の買収過程で、米国司法省が介入し、最終的にモデロの米国事業のみ、当時まだ知名度が低かったコンスタレーション・ブランズ社に売り渡したという経緯がある。

コンスタレーション・ブランズ社は、米国の企業であるが、その後、モデロをメキシコで醸造することにこだわった。メキシコでの生産能力を当時の4倍に増やし、さらに今後3年をかけて、45億ドルを投じ、メキシコでの能力増強を図る。

米国での販売戦略としては、同社は、ラテン・アメリカ系/ヒスパニック系米国人のコミュニティが大きいロサンジェルスやシカゴなどの都市数か所に重点を置き、モデロ・エスペシアルの販促を展開した。

モデロ・エスペシアルは、米国で速いペースで売上を伸ばしている。価格は決して安くない、プレミアム・ブランドであり、また、近頃流行の低カロリーとは違い、濃厚な味わいが特徴のビールであるにもかかわらず、である。

ラテン・アメリカ系米国人の人口が米国平均を上回り増え続けるのに比例し、その購買力も伸びている。米国の蒸留酒カテゴリー売上高で、長い間首位の座を守るウォッカがテキーラに追い付かれるのではという状況にあることと言い、彼らの勢いある購買力が、メキシコ由来の製品売れ行きに大きな影響を与えていると言えるのかもしれない。

米国では、社会的・文化的問題をめぐる人々の考え方の違いが、バド・ライトの評判・売上に大打撃を与えたが、今回ひとつでも良かったことがあったとすれば、それは、モデロ・エスペシアルの成功により、米国とメキシコとの間にある文化的考え方の違いが小さくなりつつあることを示唆していることである。

 

The Economist, Jun.20, 2023 / Fox Business, July 10, 2023

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