飲み易いビールばかりではない時代
2022年 8月18日
米国では、ひと昔前まで、クラフトビールと言えば、中位程度のアルコール含有量(ABV)で、フレーバー豊かな、飲み易いビール(crushable beer)が主流であった。それは例えば、ABV4~5%で、ホップが効き過ぎず、スムーズな喉越しのセッション・ビールであった。
そんな時代から数年経った今、クラフトビール・メーカーが各社共通して注力しているのは、その逆を行く、アルコール含有量が多いビールである。
4年ほど前から、アルコール含有量が多いビール、及び、ノン・アルコール・ビール、この両極端にあるビールが売れている。2019年から、ノン・アルコール・ビールの小売店売上高は27%増えた一方で、同期間に売上を落としたビール・カテゴリーはただ一つ、ABV4~6%のビールであった。
最近、米国で、ABV%が高いビールを購入し始めた人々が増えているのは、一つにはインフレの影響があると言う。マルチパックの価格が同じであれば、アルコールが強いビールを選んでいつもよりも少ない量で満足でき、結果的に節約できるから、とも考えられる。
他方、ノン・アルコール・ビール急成長の理由は、主に、一人当たりのアルコール摂取量がミレニアム世代に比べ20%低いと言われるZ世代からの需要増にある。
このようなトレンドの変化を受け、米国のビール・メーカーの多くがラインナップを調整している。例えば、ABV4.8%の旗艦ブランドPabst Blue RibbonがおなじみのPabst社(ミルウォーキー)は、エクストラと名付けたABV6.5%ビールの投入した。Dogfish Head社(デラウェア州)の120 Minute IPAビールにいたっては、そのアルコール含有量は、驚くべき15~20%である。
トレンドに常に敏感であることも重要であるが、各醸造会社は、ABV中位のビールを今すぐにラインナップから外すわけではない。米国で最も人気の高いビールはABV4~6%であることにいまだ変わりなはい。バドワイザーやミラーのような王者をトップから引きずり下ろすには時間を要するであろう。
Takeout, Aug.8, 2022