変わる米国のバー
2021年 6月29日
バーやレストランが休業を強いられた過去15か月の間に、米国人の多くが、スーパー、テイクアウト、オンラインを通じ、自分がよく知る“失敗のない”アルコール飲料を選び、購入するようになった。
今、ワクチン接種を終えた人々が増え、米国の街は人々で活気を取り戻しつつある。5月最終週、米国バー及びレストランの平均売上は30%近く増加した。それは昨年同時期と比べてではなく、コロナ禍前の2019年同時期と比べてである。バーを営む人は、コロナ禍以前の状態、つまり、消費者の新しいもの好きの傾向が戻ってくるのではと期待を膨らませそうであるが、現実には、まだ厳しい経営状況下、新しい飲料を積極的には取り扱わないバーは多い。以前は、新しいビールを10台のタップで次々にローテーションしていたバーでも、それを5台に減らす、あるいは、タップを全く使用しないかもしれない。今の時期、消費者に馴染みのない製品が売れる保証はないからである。
その一方で、ハード・セルツァーの需要は高まっている。価格が手頃で、消費者には予想できるテイストであり、さらに、この1年余りをバーではなく、自宅あるいは公園を飲む場所にしていた若い成人には、ハード・セルツァーは日常生活の一部になっているといっても過言ではない。
バーでの変化は、飲料の注文内容だけではない。経験豊富な給仕人やバーテンダーの多くが、今回のコロナ禍で大打撃を受け、既に転職している。賃金が不安定で且つ低く、コロナ禍で労働環境が極めて危険となった職場に、かつての従業員を呼び戻すのは容易ではない。そのため、バーは、人手不足でも容易に客に提供できる飲料製品に大きな関心を示し始めている。
久しぶりに友人と訪れるバーのメニューは、これまでとは少し違っているかもしれない。そのメニューにあるのは、缶カクテル、ハード・セルツァー、そして、ビール、と言っても、新種のクラフトではなく、誰にでも知られる全国区ビール、かもしれない。
The Atlantic, Jun.23, 2021