モルソン・クァーズ社、社名変更

2019年10月31日

米国内でビール出荷量第二位、世界で第7位規模のビールメーカー、モルソン・クァーズ・ブリューイング (以降、モルソン・クァーズ) 社が、ビール売上不振に悩まされている。若い消費者の大量生産タイプのビール離れは止まらず、ホワイト・クローを始めとする、アルコール入り/無糖/フルーツフレーバーの缶セルツァー、いわゆる“ハード・セルツァー”“スパイクド・セルツァー”に代表されるトレンディ―飲料への移行が続いている。そして昨日、同社は、社員の一時解雇を発表するとともに、同社の社名に多少の変更を加えることを明らかにした。現在の社名Molson Coors Brewing Companyから、Molson Coors Beverage Companyへの変更である。
モルソン・クァーズ社は、売上高及び収益が、前年比より減少したことを報告するとともに、400~500の職削減を伴うリストラの実施を発表した。同社は世界全体で17,750人、うち米国内では7,300人、の従業員を抱えている。
モルソン・クァーズ社はさらに、事務所の数も整理・統合する計画であり、閉鎖する事務所の中には、コロラド州デンバーにある事務所も含まれる。同社の人気ビールのクァーズやクァーズ・ライトが、コロラドやロッキー山脈を連想させるブランドであるだけに、この知らせは多くの人々を驚かせている。(同社のゴールデンにある醸造工場、クァーズ・ブリューワリーは維持されるとのこと) 今後は、シカゴが、同社の北米本社となる。
この多くのリストラ実施の過程で、モルソン・クァーズ社は、ビールでは、米国ビール・カテゴリーで現在最も急成長を遂げている “プレミア”よりも、“さらに上を行く(above Premiun)” ビールに投資を集中させると同時に、“ビール・カテゴリーにこだわらない(beyond beer)” 飲料開発・販売も目指す計画である。これは、同社が、今年、缶ワインや、“ハード” アルコール入りコーヒー飲料を発売したことからもうかがえる。今後、同社はさらに多くの “ビールではない飲料” を市場に投じる予定であり、それが、新しい社名への動きとなった。
低迷する売上を回復させるために多様化を図るアルコール飲料メーカーはモルソン・クァーズ社だけではない。アンハイザー・ブッシュ・インベヴ社は、米国のみならず中国でもビール売上減少に苦しんでおり、その結果、スパイクド・セルツァーへの投資を増やしつつある。一方、コロナビールを代表ブランドに持つコンステレーション・ブランズ社は、カナビス(大麻)含有飲料に注目し、カナダの医療マリファナ製品販売会社、キャノピー・グロウス社の株を所得し、開発を進める。

(CNN Business, Oct.30, 2019)

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