米国飲料メーカー、プラスチックボトル使用抑制のプレッシャー

2019年10月29日

製品を環境により優しいものにしようという動きは、米国飲料業界にも押し寄せている。今や、米国の未成年大学生が飲酒を隠すためにしばしば使用することで知られる赤色のプラスチック製カップから、世界的な飲料メーカーのコカ・コーラ社やペプシコ社のボトルドウォーターのPETボトルまでが、その影響で、プラスチックからアルミ製容器に移行している。(弊社業界情報2019年7月9日付、及び、同8月15日付に関連記事)
全米アルミ協会によれば、米国で消費されるアルミ飲料缶の約50%がリサイクルされるのに対し、プラスチックボトルのリサイクル率はわずか29%であるという。
プラスチック材に代わるアルミは、環境負荷の少ない材料として、企業のサステナビリティ活動に注目する米国消費者に認知されつつある。この変化は、米国飲料業界に定着していたプラスチック容器の地位を奪う一方で、世界最大のアルミ製飲料缶製造会社であるボール社に代表される企業の株価上昇に大きく寄与する。ボール社株は、過去12ヵ月の間に約57%上昇した。
米国最大のアルミ生産会社、アルコア社は、これまで自動車業界中心にアルミ材を供給していたが、現在では、その目を飲料缶に向け始めている。
しかしながら、プラスチックボトルをアルミ缶に代えようとする米国飲料業界でのこの急速な動きは、国内で疑問なく受け入れられているわけではない。環境への影響という点でアルミがプラスチックよりもより良いとされるのは、消費者がアルミ缶をリサイクルするという前提のもとに成り立つからである。
懸念されるもう一つの点は、缶の原料であるアルミ材の15%(2019年)を、米国では、輸入に依存していることである。この輸入依存の割合は年々増える傾向にある。ボール社は、現在、在庫がほとんどないために、既存の取引先からの需要に対応することで精いっぱいであると言う。必要なアルミ材の確保と、需要に対応する飲料缶製造能力の維持が難しくなりつつあると同社はコメントしている。

(Bloomberg, Oct.16, 2019)

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