米国政府機関閉鎖がクラフトビール業界に与える多大なる影響
2019年 1月15日
サミュエル・アダムズからシエラ・ネバダまで、米国の人気クラフトビール・ブランドを含めたクラフトビール業界全体において、現在、ビール新製品の生産を控える状態が続いている。既に米国史上最長の4週間目に突入した米国政府機関閉鎖の影響である。
アルコール飲料管理で主要な役目を果たす米国財務省下の酒類タバコ税貿易管理局(TTB)の大半の運営が止まっているため、ビール新製品が認可されない状態にある。これは、新製品、季節限定版、特別版等を常時発表することで売上を伸ばすクラフトビール業界にとっては特に大きな痛手となっている。
従業員約75人を抱えるオクラホマ州のプレイリー・アルティザン・エールズ社の場合を例に挙げると、ブラウニーを加えた最新チョコレート・スタウトビール“オー!ファッジ”(価値にして50万ドル相当分)、並びに、もう2種の新製品の売上が、今年第1四半期の収入の60%を賄うはずであった。タイミングが悪すぎたとは同社代表のコメントである。
他方、ビール開発専門チームを抱えることで知られるシエラ・ネバダ・ブリューイング社は、年間およそ150種類の新製品を醸造し、そのほとんどをレストランやイベントで売り上げる。同社は、現在、認可待ち状態の新製品12種以上を抱え、予定する中国への輸出の許可も得られない状態にある。とはいえ、シエラ・ネバダ社のように、既に業界で確立したブランドを複数持つメーカーは、既存品でこの危機を乗り越えられるかもしれない。しかし、クラフトビール業界の最大の特徴である、“小規模・個人経営”の醸造所はそうはいかない。
今回の政府機関閉鎖は、最近の人気上昇で注目されているクラフトシードル業界にも、同様の理由で、多大な影響を及ぼしつつある。
現在、7,000を超えるクラフトビール醸造所が米国で営業している。
(Wall Street Journal, Jan.11, 2019)