米国の鉄鋼・アルミ関税、ビールメーカーの懸念
2018年 3月13日
トランプ米国大統領は、8日、輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税をそれぞれ課すことを命じる文書に署名した。
一つの良い知らせとしては、この関税の対象となる輸入先から、カナダを、一時的にであったとしても、除外したことである。なぜならば、米国製缶会社が飲料缶製造で使用するアルミ材の2/3がカナダ産のアルミニウムであるからである。
一方、悪い知らせは、ビール醸造業界、製缶業界、そしてアンハイザー・ブッシュ社、モルソンクァーズ社、ハイネケン米国社、ボストン・ビール社各社の経営陣がビール缶用アルミを関税対象から除外するよう嘆願したにも関わらず、関税の対象が、全ての種類のアルミニウム及び鉄鋼になったことである。
米国製造の飲料缶については、アルミ缶の連想から、輸入アルミが注目されがちであるが、クラフトビール・メーカーは実際には、スチール製ケグやステンレススチール製装置にも多く費用を投じている。実際、醸造工場でビールを入れておくための器全てはスチール製である。つまり、醸造会社は、アルミのみならず鉄鋼への関税でも影響を受けるということである。
この輸入関税が実施された場合、例えば、ビール1缶につき1セントの値上がりとして消費者に反映されるかもしれない。わずかな額に見えるが、飲料缶業界にとってはそれは9億6,000万ドルの費用増を意味する。
米国でクラフトビールに初めて缶を採用した醸造所であるオスカー・ブルース社にとっては、それは、最大にして年間40万ドル、あるいは昨年の収入の1%分、の費用増となる。今では、米国で醸造されるクラフトビールの30%が缶で販売される。さらに、最近では、営業して1年も経たない小規模醸造所が、缶を選ぶ傾向にある。そのため、輸入関税がこのまま実施された場合、最も影響を受けるのは、これらの小規模醸造所である可能性は高い。
米国で営業する5,000以上にも及ぶビール醸造会社は、220万人以上に職を与え、米国経済に3,500億ドル以上を注ぎ込む業界である。
(Forbes, Mar.9, 2018)