米国によるアルミ輸入制限、ビール缶への影響

2018年 3月 6日

米国へ輸入される鉄鋼やアルミニウムに対し、米国が関税を引き上げる可能性を表明して以来、世界各国及び米国国内でその影響を懸念する声が高まっている。
米国のビール缶に対してはどのような影響が想定されるだろうか:
* 米国内で消費されるアルミニウムのうち、52%が輸入アルミ(2016年)。2012年より11%増。(米国内務省の報告による)
* 国別アルミ輸入量 1位カナダ、2位ロシア、3位アラブ首長国連邦、4位中国 (2017年)(JETRO 報告による)
* 米国で製造される典型的なアルミ飲料缶では、リサイクルされたアルミ約70%を使用 (The Aluminum Association報告による)
* 米国で醸造されるビールの約60%がアルミ缶を使用
* 輸入関税引き上げ実施の場合、10%の輸入アルミ関税で、缶を使用する米国飲料業界にのしかかる税金は、約3億4,700万ドル (The Beer Institute報告による)
* 輸入関税引き上げ実施の場合、ビールを含めた飲料メーカーに年間2億5,600万ドルのコスト増を強いることになる旨を、ビール・メーカーのモルソンクァーズ社及びハイネケン社がトランプ大統領宛てに先月書面で説明
* 上記の影響による費用増、売上高減で、飲料業界全体で失われる職は約20,300人分
* アルミ缶が100%輸入アルミで製造されることは考えにくいことを考慮した上で、10%の輸入関税は、6缶パックに対し約6セントほどの値上がりとなって消費者に反映
今回のアルミニウム輸入関税の提言については、自動車業界からチョコレート菓子業界(チョコレート・メーカーのハーシーズ社ブランドKissesを包装するホイルなど)までをも含む産業界が、既に強い懸念の声を発している。
米国ビールメーカー、アンハイザー・ブッシュ社を代表するブランド、バドライトは、特に米国労働者階級のためのビールとして長年位置付けられているが、その労働者階級こそがトランプ大統領を支えている基盤である。

(The New York Times, Mar.2, 2018 / Fortune, Mar.2, 2018 / JETRO 世界のニュース, Feb.23, 2018)

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