米国クラフトビール・ブーム下火を導いたもの
2017年 4月11日
ここ数年15%以上の伸びを見せてきた米国のクラフトビールの売上増加率は、現在、一桁に縮小したと言われる。それは、市場が成熟すれば予測されることではあるが、一方で、わずかな数の巨大規模・グローバル経営のビールメーカーが、国の独禁法適用不十分で助けらるなど、抵抗した結果だと分析する業界筋もいる。
米国ビール業界は、近年、劇的な統合を見てきた。それは2008年、モルソン・クァーズ社とSABミラー社とによるジョイントベンチャー事業(ミラークァーズ社)創設に国がゴーサインを出したことから始まった。その5か月後には、インベヴ社によるアンハイザー・ブッシュ社の買収・合併が実現した。国が、米国市場での二社寡占を承認するかたちになり、一夜にして、これらビールメーカー二社が国内ビール生産のおよそ90%を手中に収めることとなった。統合はそれでは終わらなかった。昨年2016年、SABミラー社とアンハイザー・ブッシュ・インベヴ社とが統合し、それに伴い、ミラークァーズ社株をモルソン・クァーズ社が買戻したため、モルソン・クァーズ社とアンハイザー・ブッシュ・インベヴ社という新たな二社寡占を生み出したのである。
さらにこの二社寡占は、もう一つの統合を作り出した。小売店へのビール分配を仲介する卸売業者間での統合である。1980年、米国に4,600を数えた卸売業者は、現在3,000以下に減り、これらの卸売業者が、二社いずれかに依存し、各地域でビールの90%以上を仕切り、販売促進、売場スペース確保、あるいはマーケティングに至るまで、個人経営のクラフトビール・メーカーよりも優先的に寡占二社のいずれかを取り扱う状態となっている。
そして今、寡占二社は、米国クラフトビール・メーカー買収を続け、クラフトビール業界での存在を広げている。
(The New York Times, Apr.7, 2017)