アルダー社、製缶業界の新星

2016年 6月 7日

欧州の飲料缶製造工場地図は、6月以降、大きく変わる。
それを見ると、ボール社工場が欧州大陸全体に散らばっているのに対し、次に数多く見られるアルダー(Ardagh)社の工場はほぼ西欧に集中する。製缶会社ボール社によるレクサム社買収がこのまま計画通り進み、アルダー社が両者の資産一部を約34.2億ドルで吸収することになると欧州地図は大きく塗り替えられる。そしてアルダー社は、ボール社とクラウン・ホールディングズ社に次いで世界第3位規模の製缶会社となる。アルダー社はさらに、世界の容器業界においても、これまで以上に大きな存在となる。アルダー社が既に持つビン事業、そして同社が世界のメジャーな食品、飲料及び消費財ブランドのほとんどに供給する食缶ならびにエアゾール缶製造事業に、飲料缶事業が加えられることになるからだ。この取引完了後には、アルダー社は、世界22ヵ国で110工場、従業員者数23,000人以上を有し、世界全体で88億ドル以上を売り上げる大企業となる。
一方のボール社もまた、この資産売却から利を得るであろうと見る関係者もいる。なぜなら、今回売却した工場のほぼ全ては、近年成長が伸び悩む一方で人件費は高い成熟市場に集中しているからである。ボール社は、この買収により、世界1位の座を確固たるものにし、さらにはボール社が現在市場シェアをほとんどあるいは全く持っていない地域に参入し、地理的に網羅する範囲を広げる考えだ。
成熟市場の中でボール社が手元に残したレクサム社の工場は、主な供給先にコカ・コーラ社を含む英国ミルトン・キーンズならびにウェイクフィールド工場、ならびに、レッドブルに缶を供給するオーストリアとスイスの工場だ。興味深いのは、今回ボール社が売却する工場が、欧州ではほぼボール社所有の工場(シュマルバッハ・ルベカ社から買収)であるのに対し、米国では、レクサム社の工場(アメリカン・ナショナル・キャン社から買収)であることだ。
今後、製缶業界は、4企業 - ボール社、クラウン・ホールディングズ社、アルダー社、キャン・パック社(ポーランド) - が主役となる。彼らはあらゆる種類の缶を供給する能力を持つ。飲料缶、食缶、缶蓋、エアゾール缶。但し、ボール社だけが王冠(クラウン)の製造能力を持たない。他方、ボール社は、衝撃押出し工法では他社を引き離している。
ボール社はすでに、フランス北部とポーランドで製造能力増強を計画していると言われている。

(The Canmaker, June 1, 2016)

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