米国地ビール・メーカー

2006年10月 5日

缶に注目
米国でビール消費量の下降が続く中、昨年、地ビール(CRAFT BEER)の売上が前年比9%増加した。これは、米国ビール売上全体の5.5%を占める。地ビールは、ここ2年間、米国飲料・アルコール事業部門で、最も速いペースで成長している飲料のひとつだ。
地ビールには、最近特に顕著に見られる大きな変化がある。使用される容器が、従来の茶色のビンから缶に変わる傾向が見られる点だ。この傾向を推し進めているのが、カナダ、カルガリーを本拠地とするキャスク・ブリューイング・システムズ社。キャスク社は、主にホーム・ブリューワリー、地ビール醸造会社、地ビール・パブ向けに小型キャニング(缶詰)システムを供給する会社だ。
キャスク社の2ライン手動システムは、二人の作業員で、 1分間に14缶、1時間に840缶(25ケース)を生産する。設置面積は、クローゼットほどの大きさだ。 一方、自動キャニング・システムには、グラヴィティ・フィードによるコンベヤー、アンジェラス社製シーマーならびに缶蓋ディスペンサーが含まれる。
キャスク社は、1999年より、国際的な主要製缶会社のひとつ、ボール社(本社、米国コロラド州)、と独占契約を結び、ボール社より印刷缶を取り寄せている。ボール社は、また、マイクロブリューワリーのためにラベルの図柄デザインについてのコンサルティングも提供する。
キャスク社ならびにボール社は、缶発注に際し、155,000缶(およそ20パレット分)以上という最低発注量を設定している。小規模ブリューワリーには、この最低限缶発注量のために、缶の保管場所を設ける必要性が出てくる点が、両社にとり今後ひとつの課題になるかもしれない。
今年5月中旬付のデータによると、キャスク社供給のキャニンング・システムは、カナダ、米国、オーストラリア、ボリヴィア、フィンランド、ハイチ、ジャマイカ、ケイマン諸島、メキシコ、台湾、トルコならびにロシアの国々の合計48のブリューワリーでそれぞれ稼動している。
年間生産量15,000バレル(17,600ヘクトリッター)未満がマイクロ・ブリューワリーと定義されるが、米国内では、1000以上の小規模ビール醸造会社のうち、およそ370社がマイクロ・ブリューワリーと見られている。
自身の地ビールを缶に詰めることを決断した最初のマイクロブリューワリーのひとつは、コロラド州山間の小さな町リヨンズにある地ビール・パブ、オスカー・ブルース。2002年からキャスク・システムを使用している。 昨年、5,000バレルを生産したが、5種の製品のうち3種のビールを缶に詰めている。
鉱山で栄えた歴史を持つコロラド州アイダホ・スプリングスにあるトミーノッカーズ・マイクロブリューワリーもまた、キャスク・システムを購入した米国西部地域にある地ビール・ブリューワリー10社のうちの1社。トミーノッカーズ社によると、1ビン24セントに対し、12オンス・サイズ缶1缶およそ9セントのコストでビールの缶詰が可能になるという。
ビンは、大規模ブリューワリーには、ある種の品質イメージを提供するという点でいまだに好まれて使用される場合がある。マイクロブリューワリーにとっては、必ずしもそうでなない。ビンは、手で持つにも配送するにも重く、割れ易く、リサイクルも容易ではない、ラベル貼りが別途必要となる、冷えにくい、屋外イベントには持ち込みを禁止される…など、その理由はビンのこの様な短所にも関連すると思われる。
過去40年間、缶工程が主要ビール・メーカーに提供してきたシステム高速化は、小規模ブリューワリーにとり決して実践的ではなかった。地ビール産業が成長を続ける今、地ビールのためのシステムが求められている。

(The Filling Business, 2006 September)

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